この写真は、昭和4,5年頃に青森市油川で撮影されたものです。写りがしっかりしているところから、専門の写真屋さんなどに頼んだもののように思えます。子供たちの服装からして、一般よりは少し富裕な家庭の子供たちのように見えます。子どもらしくおもちゃやお菓子を手にしたりしていますが、なぜか手前には唐傘が置いてあるのが不思議です。さらに目をひくのが、子どもたちの後ろにある「フルヤのキャラメル」という小旗です。フルヤとは札幌の古谷製菓で、大正14(1925)年にミルクキャラメルを発売して以降、森永製菓や明治製菓に肩を並べる全国区の人気商品になっていったといいます。この写真の頃は、フルヤのキャラメルが出始めた時期にあたります。PR用にこのような小旗が配布されたのでしょうか。
5人の子どもたちの後ろには「エンツコ」に入った赤ちゃんもいます。エンツコは非常に便利な育児用具で、農村では欠かせないものでした。ワラ製の籠の中に赤ちゃんを入れ、まわりに布などを入れて固定しておいたので、赤ちゃんは身動きができなくなります。こうすることで、農家の主婦は安心して家事や農作業をすることができました。エンツコは農家ばかりでなく、この写真のような都市部の家庭でも利用されていたようです。
エンツコは一般にはワラ製のものが多いのですが、中には木製の桶状のものもみられました。さらに竹籠の産地であった旧岩木町では竹籠のエンツコがありました。赤ちゃんがむずがるときには、エンツコの下に丸い棒を置いて揺すってやるという、揺り籠のような使い方もしました。80余年前の「エンツコ使用写真」としても、大変貴重なものです。(民俗研究家・成田 敏)
最近のコメント