私たちを襲った戦闘機は暫く上空を飛んでいたが、間もなくその影は無くなり、草むらの陰でセツさんとやっと顔を見合わせる事が出来た。セツさんはがたがた震えていたが、私の顔を見ると急に泣き出して抱きついて来た。私は大きく息を4いて身体に付いた草を払いながら、「セツさん、もう大丈夫だよね。」と言いながらまた二人で線路上を歩きだした。
するとまたさっきの戦闘機が前方に現れて、又機関砲を撃って来た。二人は又林の中に飛び込んで、今度は草むらの中でも背の高い方に逃げ込み、移動しやすいようにしやがんだ体勢で隠れた。飛行機は線路上を低空で丁度飛び去ると又例のように、でも今度は自動車並みのゆっくりとしたスピードで、極低空を飛んで来た。私はその飛行機が本当に憎たらしくなって、草むらの陰からその操縦席を睨んだ。するとそこには二人の白人が座っており、二人で何かを話しながらうすら笑いを浮かべていた。でもその目はらんらんと関いて、ギョロギョロと動かして私達を探しているのがわかった。セツさんは、「テルさん隠れて。」と言ってしがみ付いて来たけれど、私は本当にしつこいこいつらには殺されないぞと睨み続けていた。
武器を持たない一般人を殺しても、戦争とは勝てば官軍なのだなとその時つくづく思った。(聞き書き:張山喜隆)
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