最近、昭和30年代中頃に撮影された貴重な古写真を入手しました。青森市柳町にあった歌声喫茶「どん底」の店内を撮ったもの=写真上=です。表情が見えないのが残念ですが、アコーディオンを担ぎ、楽譜を見ながら歌っている男性と女性が写っています。女性は写真提供者の平賀貞子さんで、当時、「どん底」で歌唱指導をしていました。
昭和29(1954)年頃から、全国的に「うたごえ運動」が広がり、同31(56)年に「うたごえの店 灯(ともしび)」が東京新宿に生まれました。
青森では翌32(57)年5月に、珈琲&カクテルの店「どん底」が開店します。レンガと白壁のお洒落な山小屋風の建物に、ぜいたくな吹き抜けがあり、毎週水・土曜日の午後8時から「アコーディオンと合唱の夕べ」が開かれ、人気を博しました。
店内の小さなステージでは、アコーディオンの伴奏で歌や歌唱指導が行われ、毎回100人以上の愛好家で大いに盛り上がりました。人気の要因の一つには、薄暗い店内で「どん底歌集」を開き、アコーディオンの伴奏で流行のロシア民謡をはじめ、世界中の歌を全員で合唱する気軽さもあったようです。「どん底」は約7年間、青森の音楽文化の一端を担い、そして幕を閉じていきました。(「奏海」の会会長・相馬信吉)
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