皆様は1970年に公開された『八甲田山』という映画をご存知ですか?あの作品は新田次郎氏の『八甲田山死の彷徨』という小説が原作となっています。映画及び小説と史実に若干ズレがありますので、その違いを探すのもまた面白いですよ。


 今日は『八甲田山』の史実に触れるには必須のアイテム、青森歩兵第五聯隊が公式に発行した『遭難始末』という本を紹介します。明治時代に発行された本ではありますが、青森県立図書館デジタルアーカイブで閲覧することができます!


 まず、さらっと遭難事件についておさらいしましょう。八甲田山雪中行軍遭難事件は、明治35年1月23日、青森県の八甲田山中で起こりました。210名の兵士のうち199名が死亡し、生還した11名の兵士の中には凍傷により腕や足を切断した者もいました。


 『遭難始末』は、こういった悲惨な遭難事件を記録すると共に、附録に美談を掲載して遭難兵士を讃えています。
 映画では遭難原因は指揮系統の乱れや雪山に対する無知といったヒューマンエラーに焦点が当てられていると感じました。しかし、『遭難始末』では環境要因に重きを置いているようで、ご丁寧に気温変化図まで添えられています。1月23日、24日の天候が悪かったあまりに遭難したことにしたいという意図が読み取れます。


 当時の陸軍が遭難事件に対してどのような対処を行なったのか、捜索に至るまでどのような経過を辿ったのか、明治時代の史料である『遭難始末』を読み、考察してみませんか!?(津川玲菜/弘前大学4年生)