空襲警報が村中に鳴り響き、一家で持ち山に避難しようとしている時、三男だけが、腰に木刀と出刃包丁を差して動こうとしない。いくら長男が殴ったり引っ張ったりしても、家を守るんだと言って、居間の板敷きの床に犬の字に寝てしまったので、仕方なく長男も腕組みをしてそこに胡坐をかいて座った。すると、屋根の上を敵の飛行機が飛んで行ったと思ったら、直ぐに爆弾が破裂する音が聞こえた。二人は慌てて裏に飛び出して見ると、石油基地の辺りで砂煙が上がっていた。頭上を見ると、何機もの飛行機が丁度急降下して来ているのが見えた。そして家の上で爆弾を離すと、それは石油基地の方へ飛んで行き、そこでまた犬きな爆音がして土煙が立った。それを見ていたら、敵の飛行機に自分達が見つかり、機銃掃射されたので、慌てて家の中に逃げ込み、コンクリートでできた流し台と、井戸の陰に身を隠した。飛行機は屋根に弾を撃ち込んでいるのか、それとも薬莢が落ちているのか分からないが、ドドドドドドと絶え間なく音が鳴り、三男は長男に、「出刃包丁じゃ無理だな。山に逃げるか」と言ったそうだ。窓からそっと空を見て、隙を見つけて外に出て、爆弾の落ちる音と破裂する音を聞きながら、山に逃げ込んだそうです。石油基地は赤々と燃え、黒い煙は雲より高くまで上がっていたそうです。(絵・聞き書き:張山喜隆)
【伝えたい記憶】第16回 戦争「爆撃された野内の石油備蓄基地」
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