私は今年70歳になりました。50年以上前の小・中学校の歴史教科書に載っていた写真や肖像画などは、すべて白黒でした。従って大人になってからも、白黒写真を見ると、遠い過去のもの、今とは無縁のものという印象になりがちでした。このことが、歴史学習と私たちの距離を遠ざけてしまったのです。
このような中、2016年に早稲田大学の研究グループが、人工知能(AI)を用いて白黒写真を自然に彩色する技術を開発しました。これを元に渡邊英徳東京大学大学院教授は、白黒写真から感じる遠い過去の出来事との印象を、着色することによって時間差を取り払い、「今っぽい写真」に変え、「凍りついた」過去を今と地続きにし、そこから豊かな対話を生み出す「記憶の解凍」を提唱しました。
次に、カラー化の事例をご紹介しましょう。写真1は約90年前、青森市郊外で撮影されたものです。かなり昔の写真なのですが、無彩色であることは、実際の年数以上に古さを強調します。写真2は渡邊教授が、自動カラー化技術と手作業カラー補正で彩色したものです。昨日撮影した写真と言っても誰も疑わないくらいに、90年の時間差を取り払ってくれました。戦時下でも乙女達は、今と変わらない青春を送っていたことが伝わってきます。
写真3は、65年位前に青森市内に住む家族が、八戸市種差海岸へピクニックに出かけた時のものです。写真4が渡邊教授に彩色してもらったものです。女児が写真提供者の葛西承子さんです。彩色された写真を見た旦那さんが、「あれ、おめ、なんぼめごいんだば。見直したじゃ!」と感嘆の声を上げ、夫婦の会話がしばし続いたそうです。さああなたも、白黒写真の自動カラー化に挑戦してみて下さい。家族円満、夫婦円満になること、間違いありません。(相馬信吉)
※このコーナーは、2021年11月から月刊「エー・クラス」青森(青森市内全戸配布フリーペーパー 約14万部)に連載を依頼され、当該雑誌が継続する限り続けるものです。青森市以外の皆様にも、閲覧できるようHPでご紹介します。
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