マッチが日本で国産化するのは、明治9(1876) 年のことです。国産品は輸出にも成功し、マッチは人々の生活に必要不可欠なものとなっていきました。そのラベルのデザイン性も、徐々にバラエティに富むようになります。日本の伝統性を反映したもの、商業的な告知を兼ねたものなど、「ただの箱のデザイン」にとらわれないデザイン展開を見せてくれます。
 それでは、大正末期~昭和初期の青森県内のマッチラベル(資料提供:柿崎勝さん=写真1)を見てみましょう。一般的なデザインの構成要素は、「イメージ」と「テキスト」。イメージとは図柄のことで、マッチが置かれている施設の建造物(青森デパート=写真2や菊屋百貨店=写真3)やその土地を示した風景(浅虫観光ホテル=写真4)、猫(合浦カフェドン=写真5)や着物を召した女性(青森市扇屋=写真6)といったモチーフが目に止まります。

 こうしたイメージに、商品名や店名、キャッチコピーといったテキスト(文字・文章)が加わります。表記も、漢字のみ場合もあれば、カタカナやアルファベット表記も交えたものまで多様です。商品名を力強い筆の字体で表した「黒石初駒=写真7」のラベルなど、見ていて飽きません。勿論、中には具体的なイラストに頼らず、簡易な線形・図形と文字のタイポグラフィで纏めあげるデザインもあります。個人的には、「旅館福屋=写真8」や「八戸八鶴=写真9」のラベルに、洗練された構成美を感じます。
 配色を見ると、大半が2~3色以内で纏められています。当時の印刷方法(多色刷り)を考えると妥当な色数です。無彩色と有彩色の明瞭な組みわせ(大町石崎陶磁器店=写真10)や、相性の良い補色配色(大町カフェ三笠=写真11)、類似色で纏めた配色(栄作堂国道店=写真12)など、少ない色数の中で効果的に美しく見せる工夫が見られます。
 どこか懐かしくも、決して古めかしさを感じさせないマッチラベルの数々。当時の最先端なモダン的デザインは、現代の我々をも十分に楽しませてくれます。
(工藤友哉=「青森ねぶた全集」制作者)